最強の歴代・現役指名打者をプロ野球・メジャーリーグごとに調査
守備にはつかず、磨き上げられた打撃力を武器に試合に出場する「指名打者」は、1973年にメジャーリーグのアメリカン・リーグで初めて採用されました。 採用後の約50年間に多くの選手がこの指名打者として出場し、名を挙げていますが、そうなると「最強の指名打者は一体誰なのか」という疑問が生まれます。 この記事では、野球歴25年のあかねが、日本プロ野球とメジャーリーグでの歴代・現役の最強の指名打者を紹介します。 野球をあまり知らない初心者のかたや、野球をやっているが「歴代の最強指名打者」を調べたことがないかたはぜひご覧ください。
- プロ野球・メジャーリーグの歴代・現役最強の指名打者が知りたい
- ベストDH賞、エドガー・マルティネス賞受賞時の選手の成績が知りたい
指名打者(DH)制度とは
指名打者(DH)制度とは、英語で「Designated Hitter」と記され、野球において投手の打撃を専門の打者が代わりに行う制度です。
通常、野球の攻撃はピッチャー、キャッチャー、内野手4人、外野手3人の9人が事前に決められた順番(打順)に打撃を行いますが、この制度が適用される場合はピッチャーの代わりに指名打者(DH)が打席に立って打撃を行います。そのため、ピッチャーは打撃を行わないこととなります。
日本では、パリーグのみが採用していますが、なぜセリーグは採用していないのか。指名打者(DH)制度採用のメリットについては「【指名打者(DH)とは】なぜパリーグだけが採用しているの?」の記事で詳しく紹介しておりますので、あわせてご覧ください。
【日本プロ野球】歴代最強の指名打者
1975年にパリーグで指名打者制度が採用されてから約50年。これまで多くの打撃職人が生まれてきましたが、歴代最強の指名打者は誰なのでしょうか。
日本プロ野球部門では、ベストDH賞を最も多く受賞した選手、2番目に多く受賞した選手を紹介します。
1位 門田博光選手(南海ホークス) 4回
プロ野球でベストDH賞を歴代最多の4回受賞したのは、元南海ホークスの門田選手です。
門田選手は1969年のドラフトで南海ホークス(現:福岡ソフトバンクホークス)にドラフト2位で入団。 入団2年目からレギュラーに定着し、3割31本塁打、120打点を記録し、その年の打点王にも輝くきました。その打棒は晩年まで衰えず、 1988年には40歳にして44本塁打125打点で、本塁打、打点王にも輝きました。40歳を超えて40本以上の本塁打を打ったのは、門田選手とT.ローズ選手(オリックスバファローズ)のみです。
通算成績では、歴代3位の3位の567本塁打、同じく3位の1,678打点という輝かしい成績を残しました。
獲得年 | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS |
1981 | .313 | 44 | 105 | 1.086 |
1983 | .293 | 40 | 96 | 1.057 |
1988 | .311 | 44 | 125 | 1.062 |
1989 | .305 | 33 | 93 | 1.013 |
2位 オレステス・デストラーデ選手(西武ライオンズ) 3回
プロ野球でベストDH賞獲得数2位は3度受賞した元西武ライオンズのオレステス・デストラーデ選手です。 デストラーデ選手はキューバ出身元メジャーリーガーでもあり、西武ライオンズには27歳で入団。清原和博選手らと共にライオンズの黄金期を支えた一人でもあります。 来日1年目は、シーズン途中からの出場となりましたが、83試合で32本塁打、81打点の活躍を見せ、以降はメジャーリーグに戻るまでの2〜4年目で3年連続で本塁打王、ベストDH賞を受賞しました。
獲得年 | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS |
1990 | .263 | 42 | 106 | .926 |
1991 | .268 | 39 | 92 | .988 |
1992 | .266 | 41 | 87 | .979 |
【メジャーリーグ】歴代最強の指名打者
日本の歴代最強の指名打者は、門田選手としましたが、メジャーリーグでは、誰になるのでしょうか。 メジャーリーグ部門では、年間で最も活躍した指名打者選手に送られる「エドガーマルティネス賞」の受賞数を選考基準とし、上位2名を紹介します。
1位 デビット・オルティス選手(ボストン・レッドソックス) 8回
エドガーマルティネス賞を歴代最多8回受賞したのは、元ボストン・レッドソックスで「ビッグ・パピ」の愛称で親しまれたデビット・オルティス選手です。 通算541本塁打を記録し、レッドソックスでは、自身がつけていた背番号「34」は永久欠番にもなっています。
獲得年 | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS |
2003 | .288 | 31 | 101 | .961 |
2004 | .301 | 41 | 139 | .983 |
2005 | .300 | 47 | 148 | .1001 |
2006 | .287 | 54 | 137 | .1049 |
2007 | .332 | 35 | 117 | .1066 |
2011 | .309 | 29 | 96 | .953 |
2013 | .309 | 30 | 103 | .959 |
2016 | .315 | 38 | 127 | 1.021 |
2位 エドガー・マルティネス選手(シアトル・マリナーズ) 5回
歴代2位は入団時から引退までの18年間、シアトル・マリナーズでプレーをし、同賞に自身の名前がついているエドガー・マルティネス選手で、受賞回数は5回でした。 指名打者としての出場が多く、通算2,247安打、309本塁打、打率は驚異の.312を記録しています。
獲得年 | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS |
1995 | .356 | 29 | 113 | 1.107 |
1997 | .330 | 28 | 108 | 1.009 |
1998 | .322 | 29 | 102 | .993 |
2000 | .324 | 37 | 145 | 1.002 |
2001 | .306 | 23 | 116 | .966 |
現役最強の指名打者
歴代最強の指名打者を紹介しましたが、現役最強の指名打者は誰なのでしょうか。 こちらについては、日本プロ野球は「ベストナイン(指名打者)」、メジャーリーグは「エドガーマルティネス賞」を最多獲得している現役選手を条件として調べました。
【日本プロ野球】 近藤健介選手 2回
日本プロ野球の現役選手でベストDH賞を最多2回獲得しているのは、近藤健介選手(ソフトバンク・ホークス)です。 天才的な打撃を披露する近藤選手は、指名打者で2回以外に、ベストナインを外野手としても2回獲得しています。 通算打率は3割を超え、ストライク、ボールを見極める選球眼も良いことから、2023年のWBCではヒットやフォアボールで常に塁上にいるイメージがありました。 今シーズンパリーグでは唯一3割を超える打率を残していることからベストナインに選出される可能性が高いです。
しかし、指名打者良いもレフトとしての出場が多いため、指名打者の受賞回数は変わらなそうですね。
獲得年 | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS |
2018 | .323 | 9 | 69 | .884 |
2021 | .298 | 11 | 69 | .885 |
【メジャーリーグ】大谷翔平選手 3回
メジャーリーグの現役選手では、2021年から3年連続受賞している大谷翔平選手が最多でした。
2021年は46本塁打100打点、22年は34本塁打95打点、23年は44本塁打95打点と投手との二刀流ながら指名打者としても安定した成績を残し続けました。
獲得年 | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS |
2021 | .257 | 46 | 100 | .965 |
2022 | .273 | 34 | 95 | .875 |
2023 | .304 | 44 | 95 | 1.066 |
メジャーリーグでは指名打者でのMVP受賞者はいない
指名打者は打撃に専念することができるため、高い打撃成績を残すことが多いですが、メジャーリーグでは1931年から今年までの約93年間、指名打者を主としてプレーした選手がMVPを受賞したことはありませんでした。 なぜならば、MVPの選考に使われる数字がは指名打者の選手が不利となるものだからです。
鍵を握るのは総合勝利貢献度指標WAR
指名打者に不利となるMVPの選考に使われる数字は「WAR(Wins Above Replacement)」というもので、打撃や守備、走塁等を総合的に評価して、選手がどれほど貢献しているかの度合いを示すものになります。 守備につく選手は、打撃や走塁のほか、ポジションごとに加算(または減算)がされますが、指名打者は守ることがないため、大幅な減算がされます。そのため、その減算分を取り返しつつ、打撃と走塁での数値で勝負することとなりますので、ずば抜けた打撃成績を残さない限り、指名打者の選手は守備につく選手に対抗することができません。
今シーズンの大谷翔平選手のWARは
2024年の大谷翔平選手は、指名打者での出場でありながら、50−50(50本塁打ー50盗塁)を達成するなど、突出した成績を残し、WARランキングでは、「9.2」を記録し、2位に大差をつけ、ナ・リーグトップとなりました。 史上初の指名打者でのMVP獲得も夢ではないですね。
fWAR | rWAR |
---|---|
9.1 | 9.2 |
まとめ
今回は最強の指名打者は誰なのか?ということをテーマに、日本プロ野球、メジャーリーグの歴代最強の指名打者を調べてみました。
指名打者(DH)制度とは
- 指名打者(DH)制度とは、英語で「Designated Hitter」と記され、野球において投手の打撃を専門の打者が代わりに行う制度
- 指名打者(DH)制度採用のメリットについては「【指名打者(DH)とは】なぜパリーグだけが採用しているの?」参照
【日本プロ野球】歴代最強の指名打者
- プロ野球でベストDH賞を歴代最多の4回受賞したのは、元南海ホークスの門田選手
- 獲得数2位は3度受賞した元西武ライオンズのオレステス・デストラーデ選手
【メジャーリーグ】歴代最強の指名打者
- エドガーマルティネス賞を歴代最多8回受賞したのは、元ボストン・レッドソックスのデビット・オルティス選手
- 歴代2位は同賞に自身の名前がついているエドガー・マルティネス選手で、受賞回数は5回
現役最強の指名打者
- 日本プロ野球の現役最強の指名打者はベストDH賞を最多2回獲得している近藤健介選手(ソフトバンク・ホークス)
- メジャーリーグの現役最強の指名打者は、2021年から3年連続受賞している大谷翔平選手
メジャーリーグでは指名打者でのMVP受賞者はいない
- メジャーリーグでは1931年から今年までの約93年間、指名打者を主としてプレーした選手がMVPを受賞したことはない
- MVPの選考に使われる数字は「WAR」であり、指名打者の選手は守備による加算がないため、守備につく選手に対抗することができない
- 今シーズンの大谷翔平選手は主に指名打者としての出場だが、「WAR」はナ・リーグトップ。史上初の指名打者でのMVP獲得も夢ではない
受賞歴からメジャーリーグの歴代最強の指名打者は「デビット・オルティズ」選手となりましたが、現役で最多3回を受賞している大谷選手は今後も受賞を続ける可能性もあることから、数年後の結果が楽しみですね。 2024年は大谷翔平選手が指名打者として初のMVP獲得が注目されております。 発表はシーズン終了後の11月。ここでもまた歴史に名を刻むのでしょうか。